歯のはなし

「肥満予防」と「咀嚼」

現在、日本で言われている生活習慣病の代表的なものとして、糖尿病や高脂血症、高血圧がありますが、これらは肥満によって発症率が高まることをご存知でしょうか?

運動不足になりがちな反面、いつでも食べ物が簡単に食べられる今の私たちの生活は、肥満を予防することが難しい環境といえます。しかし「よく噛んで食べる」ことに気をつければ、肥満の予防も難しいことではないのです。

私たちは、脳にある満腹中枢・摂食中枢に特定の刺激が伝わることで満腹感や空腹感を感じます。この満腹中枢を刺激するのは血糖値が上がること、血糖の増加に伴いインスリンの分泌量が増すこと、食事することで消化液の分泌や消化活動が盛んになり体温が上昇することなどがあげられます。

「よく噛む」ことは、唾液が多く分泌されますし、食べ物がより細かくなるので、唾液や他の消化液が作用しやすい状態になり、消化・吸収が進んで血糖が上がりやすい状態になります。そして血糖が上がるとインスリンが分泌されます。さらに消化活動が活発になると体温が上昇します。また、私たちは食べる時に口の中で味や舌触り、香りなどを感じています。これらの感覚は、よく噛むことで増し、よく味わうことで食べていることを脳がきちんと認識してくれます。その結果、胃や腸での消化活動や消化液の分泌が盛んになります。つまり、「よく噛んで食べること」は、充分に味わって食べることができ、満腹感が得やすくなるので食べ過ぎを防ぐことができると言えるのではないでしょうか。

肥満指標と食習慣の調査でも、早食いで、よく噛まず、一口量の多い人の方が肥満指標が高いという結果も報告されています。昔の家庭では「よく噛んで食べる」という食教育がありました。これは食べ物が少なかった時代に、よく噛んで食べることで少しでも多くの満腹感が得られるように、そして少ない食べ物を効率的に吸収できるようにという生活の知恵からきたものと想像できます。

肥満は毎日の食生活の積み重ねの結果です。「噛む」という習慣を今一度見直して、さらに「噛める」ための歯を守り、健康な体を維持しましょう!